「あぁ、だりぃ・・・」












俺はあくびをしながら廊下を歩いていた。

今日も部活をサボった。

さつきに「絶対に来てよね!」と釘を刺されたけど、そんなの無視だ。

練習したって何の意味もない。

それなのに何故か俺はまだ校内にいた。

さっさと帰ればいいものを。






ふと1つの教室の前で足を止める。

少し開いたドアの隙間から中を覗くと、見知った人物が机に突っ伏していた。

俺は静かにドアを開けて、近づく。

気付かれないように、そっと。

横に立った俺は彼女―――の顔をのぞき込む。






「んだよ、寝てんのかよ」






規則正しい寝息が聞こえてきた。

まぁ、そんなことだろうとは思った。

もしかして具合悪いのか?とかちょっとでも心配した俺がバカみたいだ。








下敷きになっているノートに目を移すと、他校バスケ部のデータが事細かに書いてあった。

おそらく他校に関するデータ収集をが、そのデータを元に予測するのをさつきが。

そういう風に分担して作業しているのだろう。






「熱心なこった・・・」






俺はよくやるなと少し呆れて、ため息をつく。

こんなになるまで頑張らなくても、ウチが負けるはずないのに。

きっともウチが負けるはずないと思っているに違いない。

だが、手は抜きたくないんだろう。

俺と一緒で心底バスケが好きだから。








そんな疲れて眠っているの姿が愛おしく思えて、

俺は気付くと頭を撫でていた。

起こさないように、優しく。

指で髪をすくってみる。

キレイなストレートの髪に夕日が反射してキラキラ輝いているように見えた。

そのままクルクルと指に絡めてみる。

サラサラしているもんだから、するっと指から逃げていく。








チラッとの表情を伺ってみるが、まだ規則正しい寝息が聞こえてくる。

頭に触って、髪をいじって遊んでいるのに起きる気配がない。

よっぽど疲れてるんだな、のやつ。







「・・・まつげ、長ぇよな〜」






夕日に照らされたの顔を見つめて独り言のように言う。

オレンジ色に染まる頬が愛くるしい。

触れようと手を伸ばして、直前で止める。

さすがに気付いて起きるか。

引っ込めることもできず、もう一度優しく頭を撫でる。






「・・・キレイだな・・・」


「何が?」







ボソッと呟いた言葉に返ってくるはずのない返事があって、

俺は思わずパッと手を離す。






「おま、いつから・・・?!」






驚きが隠せない。

少し焦っていたせいで上手く言葉が出てこなかった。

は俺が何を聞きたいのか察したようで、全て言わずとも返事を返す。






「ん〜、大輝が頭なで始めた辺り・・・からかな?」


「・・・ほぼ全部じゃねぇか・・・」






大きく伸びをしながらは微笑む。

俺はやられたとばかりにため息が出る。






「で?何がキレイなの?」






はいたずらっ子のような笑顔を向けてくる。

これは俺の予想だが、多分、のやつ、俺が近くに立った時から起きてやがった。

だが、あえて狸寝入りをしていた。

俺がどんな行動をとるのか見るために。









っとに性格わりぃ。

この笑顔を見るとそう思わざるを得ない。

でも、この笑顔には到底敵わない。

敵うはずがない。

そう思わせる笑顔でもあった。








俺はに顔を近づける。

真っ直ぐに俺を見るの目と目があった。







「・・・お前が、だよ」







聞こえるか、聞こえないかぐらいの小さな声で呟くと同時ににキスをした。

面と向かって言うには少し照れくさかったから。

聞こえなきゃいいのにと思った。

でも、しっかりの耳に届いていたようで。

唇を離すと、ふふっと小さく笑う声がした。







「ありがと」







俺の目を真っ直ぐに見つめてが言う。

とても嬉しそうな顔をして。












いつも俺の一歩前を歩いていて、時々振り返って余裕の表情を見せる。

そして振り回されて、気がついた時にはのペースに巻き込まれている。

それが妙に癇に障る。

けど、別に嫌とかじゃなく、ただに振り回されっぱなし、

俺だけ驚きっぱなしっていうのが気にくわなかった。

だから、いつか追い抜いてやる。

んで、振り返って、余裕の顔で振り回して、俺のペースに巻き込んで。

いつも俺がしているような顔を、今度はにさせてやる。

絶対に。

そんなことを胸に誓う。











まだ俺を真っ直ぐに見つめて、余裕の顔でニコニコしているの顔が目に飛び込んでくる。

それがやっぱり癇に障って、俺はもう一度にキスをした。










いつかその余裕をしてやる
(ちょっとは驚いたか?) (予想の範囲内♪) (・・・・・・そうかよ)









−−−−−−−アトガキ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

一応カップルという設定で書いてます。
全然そんな感じに見えないけど。

同い年だけど少し大人っぽい、でもいたずらっ子な彼女さん。
そんな彼女さんに振り回されてて、でもいつか逆に振り回してやろうと思ってるのに、
結局は振り回されてる青峰君。
そんなイメージ(笑)
カップルさん書くと、なぜこうもバカップルなのだろう・・・。


それでは、ココまで読んでいただきありがとうございました。


12.06.25





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