「ねぇ、真ちゃん。お願い書いた?」


「まだなのだよ」


「早く!早く!七夕終わっちゃう!」


「そんなに早く終わらないのだよ」





は短冊を握りしめて、隣に座る俺を急かす。

俺はの方をチラッと見る。





はもう書いたのか?」


「うん!バッチリ!見て、見て〜!」





は笑顔で短冊を見せてくる。





「『可愛いお嫁さんになる』・・・には無理なのだよ」


「何でよ!ひっど〜い!」





は俺をポカポカと叩く。





「          」


「え?」





俺の言葉を聞くとは叩く手を止めて、満面の笑みを俺に向けていた。










願いを1つえて下さい











今日は7月7日。

世間一般では七夕として賑わっている。

そして、俺の通う秀徳高校でも七夕ということで浮き足立っている。

何でも生徒会主催で七夕会をすることに決まったらしい。

星にお願いをするなど、人事を尽くしているとは言えない。

そう心の中で文句を言いながら俺は生徒会室へ続く廊下を歩いていた。










昼休み。

いきなり校内放送がかかり、聞き慣れた声が聞こえてきた。







「1年B組 緑間真太郎!用事があるから至急、生徒会室に来るように!以上!」






私用としか思えない内容の呼び出しを幼馴染みのにくらった。

周りから「何したんだ?」という視線を浴びせられた。

近くに座っていた高尾が腹をかかえ、声を殺して笑っている。

その姿が気にくわなかった俺は高尾の椅子を軽く蹴ってから廊下に出た。








・・・そして、今に至る。

用事があるなら教室に直接来ればいいものをわざわざ校内放送で呼び出したのだ。

腹が立つにもほどがある。






「全く、迷惑なヤツなのだよ」






不満と一緒にため息が出た。

ふと視線を上げると「生徒会室」と書かれたプレートが目に入り、扉の前で足を止めた。

一応、ノックをして扉を開ける。






「失礼しま・・・」


「パーン!!!!」






俺の言葉を遮って、大きな音が聞こえた。

と同時に顔に何かが飛んできた。

目を開けると、満面の笑みを向けたとその手にはクラッカーが握られていた。






「驚いた?ねぇ、驚いた?!」


「・・・顔面にクラッカーを当てられれば誰だって驚くのだよ」






俺は顔にかかったテープを取りながら、ため息をつく。

何がしたいんだ、は。







「もうそんな怒んないでよ〜。軽いジョークでしょ?」






は楽しそうに笑っている。

そして、俺に細長い箱を手渡してくる。






「はい!誕生日おめでとう!」


「・・・ありがとうなのだよ」






俺は素直に受け取った。

毎年恒例みたいになっているが、いまだに照れる。

緩みそうになる頬を必死に我慢して、でも少しだけ微笑んだ。

は俺の顔を見て満足そうに微笑むと室内を歩き出す。

そして壁に立てかけてある笹の葉を弄りながら話し出した。







「それにしても七夕とか懐かしいよね〜。昔思い出すな〜。あ!願い事書いた?」


「・・・書いてないのだよ」


「何で!ちゃんと書きなさいよ!あたしの企画を台無しにする気か!」


「・・・やっぱりが発案者か・・・」






俺はため息混じりに言った。

は昔から七夕が好きで、小さい頃からよく俺を巻き添えにしていた。






「当たり前でしょ!年に1度の大イベントよ!だから、書け!」






そう言っては俺の目の前に短冊を突き出す。

今のに何を言っても聞かないと思った俺は渋々短冊を受け取る。

何か適当に書こうと思うが、一向に何も思い浮かばない。






「そういえば、はもう書いたのか?」


「もちろん!」






俺が聞くと、は自信満々に即答する。







「昔みたいに『お嫁さん』か?」






少し意地悪く聞いてみる。

は頬を少し膨らませる。







「んなわけないでしょ。あれは小さい頃の話」


「じゃあ、何て書いたのだよ?」


「う・・・」







は一瞬言葉に詰まらせた。

そして、俺から視線を外してボソッと呟く。







「『彼氏出来ますように』」


「昔とさほど変わらないのだよ」






俺は眼鏡を上げながらツッコミを入れる。

どうやら思考回路はあの時から成長していないようだ。






「うるさいなぁ!」





は顔を真っ赤にして反論する。






「第一、みたいに大雑把なヤツには彼氏はできん」





俺も負けじと反論する。






「やってみなきゃ分からないでしょ!つーか、真ちゃんにこそ絶対に彼女とか出来ないから!」


には関係ないのだよ!」


「なら、あたしのことだって真ちゃんには関係ないでしょ!」





少し大きな声で言い合いをしたから息が切れた。

全く、本当に頑固で男勝りなヤツだ。






「あぁ、もう疲れた!真ちゃんのせいだからね!」


「それはこっちの台詞なのだよ」






肩で息をしながらが俺を睨みつける。

俺も睨み返す。

数秒睨みあったところで俺はから目を逸らした。






「ま、もしもお前に彼氏が出来なければ俺がなってやってもいいのだよ」


「・・・は?」






俺がそう言うとは鳩が豆鉄砲を食ったような顔で見上げてくる。

顔が熱くなるのを感じた。

が、気にせずに続ける。







「・・・昔の、約束だからな」







俺は眼鏡をクイッと上げる。

まだまともにの顔を見れそうになかった。







「バーカ」







声が聞こえて一瞬だけ盗み見る。

は思い出したかのようにクスクスと笑っていた。

少しだけ頬を赤らめて。








小さな頃にした願い事。

もし叶えてくれるなら、

今、

この瞬間に―――






「もしも誰もをお嫁にもらってくれなかったら、俺がもらってあげるのだよ」






−−−−−−−アトガキ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

照れ屋なイケメン真ちゃん下さい。
真ちゃんは最高のツンデレです。
ツンデレは宝だよ。マジで。

七夕がバースデーということで七夕ネタ。
小さい頃は短冊書いてたけど、
いつしか七夕と聞いてもわくわくしなくなっていたので、
ちょっと今、わくわくしてみた(笑)

そして、ちょこっとだけ高尾出してみた。
3人とも同じクラスだったら面白そう。
つーか、高尾同じクラスに欲しい。
真ちゃんが実際何組か知らなかったから適当に血液型にしてみた。
高尾もBっぽそうだし。


それでは、ココまで読んでいただきありがとうございました。


12.07.07





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