神社の境内に続く参拝道。
たくさんの屋台が建ち並び、多くの人でごった返していた。
その人ごみの中をと手をつないで歩く。
特に会話はしていない。
ただただ2人で手をつないで歩いていた。
「あ、金魚すくい」
ふとが立ち止まる。
僕も自然と足が止まった。
視線の先には金魚すくいの屋台。
「やるんですか?」
僕が聞くと「ううん」と首を横に振る。
「やっても取れないもん。あ、テツが取ってくれるならやる」
そう言って僕に笑顔を向ける。
「無理です。取れると思いますか?」
「そこは彼女のために頑張ってよ」
僕がため息混じりに言うと、はふふっと小さく笑った。
まるで返ってくる答えが分かっていたかのような顔をしていた。
「でも、金魚欲しいな」
そう言いながらが僕の手を少し引っ張って歩き出す。
「買えばいいんじゃないですか?」
「買うのじゃダメだよ。気持ちが違うもん」
「気持ち、ですか?」
「うん。自分で取った金魚と買った金魚とじゃ、飼う時の気持ちが違うの。
取った方がすごく愛着湧くでしょ?」
はまるで目の前にその情景が浮かんでいるような、そんな愛おしそうな表情で話す。
「そんなものですか?」
「もう!テツは意外と無頓着というか、執着がないんだから!」
僕が素っ気なく答えると、少し呆れたようにが言う。
「僕はあまり金魚、好きではないので」
「どうして?」
僕の発言にが首を傾げる。
「すぐに死んじゃうじゃないですか」
「それは多分、テツの世話の仕方が悪いんだと思うよ」
が苦笑する。
僕は少しだけ頬を膨らまして「失礼です」と言った。
するとは「ごめん」と謝った。
口では謝っているが表情は少し楽しそうに笑っている。
面白いモノでも見たかのように。
今度は僕がふと立ち止まる。
がそれにつられて立ち止まった。
不思議な顔をして僕を見上げる。
「でも、今なら少しだけ金魚好きになれそうですね」
「なんで?」
首を傾げているに少し微笑むと、僕は顔を近づける。
そして、そのままキスをした。
唇を離すと目の前には顔を真っ赤にしたがいた。
突然のことに驚いたようで口をパクパクと動かしている。
それを見て、僕は笑みを少し深くする。
思った通りの反応をがしてくれたから。
「僕の隣にいつも可愛い金魚がいてくれるので、今なら好きになれそうですよ」
そう言うと、今度は僕がの手を引っ張って歩き出す。
歩きながらが軽く僕にタックルをする。
そして、赤い顔のまま、小さく「バカ」と呟いた。
それさえも可愛くて、僕は握る手に力を込めた。
こんな人が多い状況だから
きっとはそんな反応をしてくれると思った
予想していた
だから、僕は―――
喧騒に紛れてキスをした
(期待を裏切らない反応、ありがとうございます) (それ、褒めてる?)
−−−−−−−アトガキ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
夏といえば夏祭り!!!!!!
ということで始めたお題企画。
今回は黒子っちです!!!!
本当はね、赤司か黄瀬がやりそうだと思ったので、どっちかにしようと思ったんですが・・・
やりそうもない人物にやらせてみるのもアリかと思いまして、
あえて黒子っちにしてみた。
けど、彼は意外と大胆な部分あるので、今考えるとサラッとやりそうですね(笑)
金魚すくい、自分も好きですけど取れない。
そして取ってきてもすぐ死ぬ。
ペットショップの金魚はそんなに魅力的じゃないのに、
どうしてああも屋台の金魚たちは魅力的なんですかね?
これも夏祭りの威力なんでしょうか(笑)
それでは、ココまで読んでいただきありがとうございました。
12.08.07
お題提供元:確かに恋だった様
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