暗い廊下を電気をひとつ、またひとつと点けながら歩いて行く。

目的地は1年教室。

そこで待っている人に会いに行くために。
















暗闇に浮かぶは優しい














事の発端は今日の放課後。
帰りのHRを終えて真ちゃんと部活に行こうとした時だった。





「高尾、部活終わったら教室来て?」





隣の席に座っていたが言った。
俺はキョトンとする。





「イイけど・・・何で?」

「何でも!とにかく部活終わったらここね!」





詳しいことは何一つとして喋らないまま、
用件のみ俺に伝えるとは鞄を持って教室を出て行く。
俺は?マークを飛ばす。
何かあったか?と考えるが全く検討がつかない。
腕を組んで考えていると、「早くしろ」と真ちゃんに急かされた。
先に歩き始めた真ちゃんを追って教室を出る。
一瞬だけ、チラッと教室を見た。
とりあえず放課後、ここに来れば分かるだろ。
そんなことを考えながら、歩を進めた。





そして、今に至る。





校舎に残っている人が少ないためか、廊下の電気は消されていた。
さすがに真っ暗な中を1人で歩く度胸はないため、
電気を点けては消して、点けては消してを繰り返し、教室に向かう。
やっと目的の教室に辿り着くが、電気が消えている。





「・・・のヤツ、呼び出しておいて帰ったんじゃ・・・」





あり得ないこともない。
忘れっぽいところのあるだから、
自分が呼び出したことを忘れて帰っている可能性は高かった。





「・・・とりあえず、中入ってみるか」





黒板側の扉を開ける。
と同時に、パン!と何かが爆発したような音がした。
小さい音ではあったが、俺を驚かせるには十分な大きさの音だった。





「うわ!?」

俺が声を出した数秒後、教室に灯りがともる。
急に明るくなって俺は一瞬目をつぶった。
ゆっくり目を開けると、そこにはがいた。





「驚いた?」

「そりゃあ・・・驚くだろ?」

「うん。だと思う」





ニコッとが小悪魔みたいな顔で笑った。
いたずらが成功したのが嬉しいようで。





「んで、どうしたの?教室に来いなんて」





自分の席に戻ろうとしているの背中に声をかける。
からの返事はない。
ただ机の上で何かいそいそと準備をしている。
俺はのせいで頭に乗っかった物を取り除く。
手に取ったそれは、よくパーティーなんかで使うクラッカーの中身に似ていた。





「高尾」





が呼ぶ。
クルッと顔だけこちらに向けて。





「ん〜?」





俺が返事をすると手で来い来いとする。
?マークを飛ばしながらのところに行こうとする。





「電気消してきて」

「電気?何で?」

「消せば分かる」





そう言うとは微笑んだ。
さっきの笑顔とは違う、ほんわかとした優しい笑顔。
ちょっと高鳴る胸を押さえつつ、俺は言われた通り電気を消す。
再び教室内が暗くなる。
ただ一カ所を除いては。





の周囲だけ、ほんのり灯りがともっている。
淡い、オレンジ色の優しい光。
が来い来いともう一度手招く。
俺は光に吸い寄せられるように、の元に歩いて行く。





近くに行ってようやく理解する。
淡い光は1本のろうそくの火。
そしてその下には小さなショートケーキ。





「誕生日。どうしても当日にお祝いしたくて」





ちょっと照れくさそうに頬をポリポリと掻く。





「部活忙しいでしょ?だから遊びに行くとかは難しいし。でもやっぱりお祝いしたいから。こんなことしか思いつかなかったけど」





そう言うと照れくさそうに微笑む。





すっかり忘れていた自分の誕生日をが覚えていてくれて、
サプライズでお祝いしてくれて、
しかもケーキまで用意してくれて、
あまりの嬉しさに無言で抱きつく。





「た、高尾?」





の戸惑う声が聞こえた。
俺は抱きしめる力をさらに強めて、





「ありがと、すっげー嬉しい」





と、たった一言、声を絞り出して言った。
背中にの体温が伝わってくる。





「・・・喜んでもらえたみたいで何よりです」





嬉しさの混ざった優しい声が耳に届く。
同時にギュッとが強く抱きしめ返してくれる。
俺も負けじと抱きしめ返す。
何も言えないまま、ただ強く抱きしめ返した。





−−−−−−−アトガキ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

高尾生誕祭企画ということでアンケートさせてもらい、
2位に選んでいただいたシチュエーション、「彼女さんからお祝い」です。
投票いただきありがとうございました!!!!

本当はもっといろいろと内容入れるつもりだったんですが、
あまりにも長くなりそうだったので短くしちゃいました。
今回入れられなかったことは次の誕生者に受け継いでいこうかと。
・・・赤司様に・・・ですかね(笑)

不器用彼女さんのイメージで書いたんですが、
端折りすぎたせいで彼女さんの設定がなんだか安定してませんね・・・。
いつもサプライズなんてしないような人からサプライズをもらった時ほど、
嬉しいことはないと思います。
前も言ったけど、管理人はサプライズ大好きです。
ただし、やる方限定で、ですが(笑)


それでは、ココまで読んでいただきありがとうございました。


12.11.21





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